読書「猫の帰還」

猫の帰還

猫の帰還

小学生高学年向きとありますが、戦時下の状況で男女の性愛描写が妙にリアルですから、どちらかというと大人向きかな。いや、もちろん小学生だろうが中学生だろうが呼んで差し支えないです。
犬が飼い主を求め彷徨う話は有名ですが、猫だとなかなか見つかりません。この話は基本に実話があるそうで、なかなか興味深いものがあります。
猫が好きな人にはお勧めしたいと言いたいところですが、猫は主役のようで主役ではなく、入れ替わり立ち替わり現れる飼い主(もどき)が主役です。そしてそれぞれが戦争の中で我を見失ったり、目の前のものに執着してみたり、そんな生々しい描写が戦争を如実に物語ります。英雄なんていないし、戦争の本質は単なる殺し合いなのだ、そう読者に訴えていると思います。
なめてかかると、背負い投げを食らう、そんな一冊。